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Jupiter I

限りなくエジソンに近付いた御影――アニメ『タイムトラベル少女~マリ・ワカと8人の科学者たち~』――

アニメ 感想

もやしもん以来かな?

半年くらいぶりにアニメの一気見をした。

 

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2016年夏アニメの一本、タイムトラベル少女です。

  

 

スタイリッシュなハッシュタグについては置いておくとして。

 

ネタバレへの考慮はなく語りますので、ご注意ください。

 

超主観的なあらすじとキャラ紹介

あらすじ

主人公・マリは、科学者の父とパティシエの母を持つ中学生。

この科学者の父親が、とある企業の社長・御影から資金提供されつつ、物質転送装置の開発をしていた。

物語スタート時点では、父は三年間失踪している状態で、マリは失踪する直前の父から不思議な(某飛行石っぽい)ペンダントを預かっている。

 

キャラ紹介

■ マリ(主人公)

某飛行石っぽいペンダントを使ってタイムトラベルする。

タイムトラベルする先は、電気についての発明や発見をした科学者のところ(年代順に飛ぶ)。

勉強はあんまりできないし科学もよくわからなかったけど、タイムトラベルするうちに向き合い方が変わったり、興味が出てきたり。

 

■ ワカ

もう一人の主人公っぽい、ワカの友達で同級生。

ツンデレお嬢様で勉強のできる世話焼き委員長キャラ(委員長とは言ってない)。 

幼馴染で同級生の風太にわかりやすく片思い中。

 

■ 旬にぃ

テンプレの頭脳明晰イケメンで、ワカの兄なスタイリッシュ高校生。

性格もお兄ちゃんキャラで、マリのタイムトラベルをサポートする役。

マリの父の研究所に前から出入りしていてちょっと話を聞いたりしていたらしい。

 

■ マリの父

タイムマシンを作っちゃって、実際にそれであちこち飛び回ってるうちに帰ってこれなくなったっぽい、体育会系科学者。

タイムトラベルに必要なのは「物質転送装置(?)」「某飛行石っぽいペンダント」「電気開発の歴史についての未来の本」の三つだけど、このうち前の二つを作った人。

 

■ マリの母

気の強い姉御肌で包容力のはんぱないパティシエ。

御影に口説かれたり、旦那に鉄拳喰らわせたりする。

 

■ 御影

マリの父に資金提供していた社長で金の亡者という名のビジネスマン。

見た目も中身もやり手の若手企業家で、のっけからキャバクラでちやほやされている。 

 

■ 黒木くん

御影の美人秘書。

妄信的に御影を尊敬しているっぽいけど、「君も食べるかい?」と御影に言われたプリンを箱ごと残り全部すばやい手つきで持ち帰っていったところからして、プリン>御影を怪しんでいる(当社調べ)。

 

 言葉のTPO

 言葉というのは不思議なもので、同じ言葉でも、使う人や相手、場所、時間、感情といった変数が異なれば、意味や印象が全然違うものになる可能性を持っている。

 

たとえば、『おいしそう』について。

 

<ケース1>

しばらく会社に泊まり込みになるほど仕事に忙殺されていたサラリーマンがやっとの思いで家に帰り、可愛い娘のハグ付き「ぱぱ、おかえり!」攻撃でデレデレになったあと、キッチンで愛する妻が「おかえり」といいながら並べている温かい手料理を目にし、『おいしそう』とつぶやく。

 

 <ケース2>

数日前から帰り際につけられている気がする女子大生。バイト帰りの夜道が不安で彼氏に電話をして話しながらアパートまで歩いている途中、見回りの警察官とすれ違う。「不審者が出るからって見回りしてくれてるみたい、よかった」彼氏にそう伝えて安堵感から電話を切り、アパートの階段を上り始めたところで背後に気配を感じ、振り返ると真後ろにさっきの警官が立っていて『おいしそう』とつぶやく。

 

最近オカルティックナインを見ているので、ケース2に影響が出ているのは間違いないのだけど、とにかくこの二つのケースでは、どう考えても『おいしそう』の印象が違うわけだ。

こんなこと説明するまでもなく、日常を過ごしていれば感じられることだろうけれども、とりあえずの前置き。

 

 

さて、タイムトラベル少女の話に戻る。

 

マリの父親に資金提供していた御影は、マリの父親が失踪した件について「物質転送装置は完成したけれど隠しているんじゃないか(実際そう)」と思い、動き始める。

その一環として、マリの母親にコンタクトをとり、お得意のビジネストークで父親の研究所に入らせろ(意訳)と言う。

が、マリの母親は、御影の小手先の口実には左右されず、御影の提案を突っぱねる。

 

その場をおとなしく後にする御影が、車の中で口にした言葉が「聡明な人だ」である。

個人的には「聡明な女(ひと)だ…」くらいのニュアンスがあったように感じたが、それはまた別の話として。

 

このときの『聡明』には、御影の思いが大きく分けると二種類入っているように思う。

 

ひとつは、自分のご自慢ビジネストークに簡単に惑わされない、マリの母親の判断力と冷静さを認めていること。

企業家として成功している御影がどのようにその世界を渡っているかの片鱗は、そのエピソードに至るまでのシーンで語られている。

実際に、御影の言葉や雰囲気に丸め込まれる使い捨てキャラも登場する。

そういったストーリーの流れから、マリの母親に対して悪い印象を抱いてはいないことは(この後で本気なのか作戦なのか微妙な口説きターンが何回かあることから邪推しても)なんとなくわかる。

 

そしてもうひとつは、逆に、自分のビジネストークにうまく乗ってこない厄介な存在であると感じていること。

御影はこのエピソードの後、マリの母親について調べ、彼女がなかなかの財閥の娘であることを知る。

金で動くタイプの人間ではない、と御影は彼女を評する。

御影はビジネス上、金で動かせることがあるなら簡単だという意識のキャラだけあって、この発言からマリの母親を多少なりとも厄介だと感じているのは確かである。

一応週末朝の子供向け枠のアニメであることから考えても、確定的な勝利要素がある or 最終手段でない限りは力技に出ないキャラくさいことからして、スマートに自分の思い通りに事を運ぶために、マリの母親が支障になっていたことは間違いないだろう。

 

そんなわけで、まとめると。

御影の口にした『聡明な人だ』には、マリの母親に対して高評価する思いと厄介者扱いする感情が含まれている、と私は考える。

 

 

さて、上記の御影の発言との比較として、御影を崇拝する美人秘書・黒木も物語終盤、マリに向かって「聡明な子ね」と口にする。

 

これは、物質転送装置周辺の秘密が御影にばれ、ワカや旬にぃ、マリの母親までも縛り上げられてしまい、追い詰められたマリがタイムトラベルのことについて話すしかないと判断したときのシーンである。

 

このとき、秘書の黒木および御影は、人質をもってしてマリを脅している。

マリは話す以外の選択肢を選べない、お約束とも言える展開だった。

状況から考えて、黒木の言う「聡明な子ね」はマリを素直にほめているわけではない。

ここでは嫌味ったらしく使われていると感じるのが妥当だろう。

もしかするとわずかにでも認めている感情は含まれているのかもしれない。

でも、その感情は自分たちの思い通りに動いたことに関しての意味合いが強く、マリ個人の人間性を認めているわけではおそらくない。

 

補足になるけれど、御影が件の「聡明な人だ」発言した際には、黒木は側にいない。

この発言を聞いていて真似したわけではないことがわかる。

 

ただ、ここからは私の邪推になるけれど、御影を崇拝する黒木が言動その他について御影に影響されていてもおかしくはない。

だから私は、この二つの『聡明』の言葉が強く印象に残っている。

 

黒木は御影を崇拝していて、いろいろと影響を受けていたと仮定する。

もちろん言動や思考もそうありたいと意識することで次第に似通っていく。

でも、本質的なところでは理解できていなかった。

それがこの「聡明」の使い方および意味の違いに表れているとする。

黒木の放った「聡明」から感じ取った印象が、嫌味たらしく小物っぽく感じられるのもその一環なのかなと。

 

たまたまかもしれないけれど、もしそこまで計算されてセリフが書かれていたのだとしたら(もしくは作品世界にキャラが生きているとすれば)、それは単純にすごいことだと思う。

 

 

功利主義と「自分」

まさか言葉の印象の話だけでこんなに長くなるとは思わなかったので、書きたいことはたくさんあるけどもうひとつだけ手短に記しておく。

 

この作品において御影は、タイムトラベルした先々に生きる科学者を筆頭とした、自分の利益を追求せずに何らかの道を進み続ける人たちとは対極の存在だと言える。

(実際の科学者の全員がそうなのかどうかは知識不足なので例外はあるかもしれないけれど)

 

御影は功利主義者である。

キャラ紹介のところでも言っているが、私には彼が金の亡者に見える。

どういう理由かは知らないけれど、金のために動いている男だと思う。

 

御影は作中、子供時代の自分にとってエジソンはヒーローだったと口にする。

それはエジソンが偉大な発明家だったと同時に、偉大な実業家だったから、という理由だと作中から読み取ることができた。

無知な私はその詳細を知らなかったので改めて調べてみたけれど、本当に相当な能力を持った実業家であったらしい。

 

数々の発明を生み、加えて利益まで手にしてきたエジソン

御影が彼をヒーローと思っていたのが、子供のころ、というのがミソだ。

御影という人間の根幹に、利益第一主義が存在しているらしいことがなんとなくうかがえる。

 

そんな子供がどんな大人になったのか?

起業して成功し、物質転送装置なんていう常識から逸脱したような怪しい研究に資金提供をし、かつ、その資金源のために他人にも資金出資をさせているようである。

ようするに『タイムマシン発明プロジェクト』の企画者なのだろう。

エジソンのように、偉大な発明とそこから生まれる莫大な利益を自分のものにしようとしていることは想像に難くない。

 

 

少し話を逸らそう。

前にネットの海でとある言葉を見かけたことがある。

正確な文言は忘れてしまったけれど、趣旨はこうだ。

 

Aに憧れて「そうなりたい」とどんなに近付こうとも、それは『限りなくAに近いB』である。

Aそのものにはなれない。

 

当たり前のことのようで、核心をついている言葉だなと印象に残ったので覚えている。

 

 

エジソンに憧れた少年時代の御影は、おそらくエジソンのようになりたいと思ったことだろう。

そして、エジソンは子供時代の自分のヒーロー『だった』と言いながら、大人になった作中でも同じような行動をしているところから、エジソンの存在が御影の中で大きなものであることは感じ取れる。

 

でも、御影はエジソンではないのである。

 

エジソンは偉大な発明をし、莫大な富を築いた。

莫大な富を築くために発明をしたとは、様々なエピソードを読む限り、私には思えない。

利益を求めた部分もあったかもしれないけれど、「それとこれとはまた別」というやつだったのかもしれない。

純粋な探究心や強い意志の持ち主だったことはおそらく確かだろう。

 

それでは御影はどうか。

彼は自分および会社の利益を一番に考えていた。

心理的利己主義というやつかもしれない。

最終的な自分の利益のために、クルーザーやバーベキューなどをマリたち(というかマリの母親)に提供したりもしている。

(そこに別な下心があったかどうかは定かではないけれども)

 

最後の最後まで利益を求め続けた御影。

そんな御影が歴史のひずみに取り残され、エジソンと肩を並べて共闘することになる。

史実に載った写真の中の御影は、なんともすがすがしい表情をしている。

この閉幕で御影は、「エジソンに憧れて近付こうとした御影」ではなく、「エジソンとともに事業を発展させていった御影」になったのだろうと私は思う。

 

 

おわりに

どうにも御影という存在が自分に一番似ているように感じたからか、そこに焦点が向かいやすくなってしまったけれど、全体的に見てとても楽しめる作品だった。

 

シンプルイズベスト。

子供が科学に興味を持つにもわかりやすく面白い内容だったと思うし、大人が見ても楽しめる素敵なアニメ。

鍵となるアイテム・人・言葉が収まるところにぴったり収まっていた。

実は作中のシステムや謎がすべて詰め込まれていたアイテムが、智恵の実のモチーフとされているリンゴであることも、個人的に推していきたいポイントのひとつ。

 

マリの父親のタイムトラベルの謎についての理解は諸説あるようだけれど、自分の中ではうまく結論付けられたのでよしとする。

 

願わくば、御影の秘書である黒木の救済を…。

OPにあるように、きっと彼女も幸せな未来にたどりつけるのだと信じている。